ブログ

リフォーム工事前に行うアスベスト調査ってなに? 義務化された理由は?

お役立ちコラム

更新日:2025/06/30

2021年に気汚染防止法の一部改正が行われたことにより、私たちの住む住宅にもアスベストのより厳しい規制が適応されました。住宅を建てた年代によっては、アスベストが多く含まれているケースもあります。そのためリフォーム工事を依頼した際に、「アスベスト調査を行います」と言われることもあります。アスベスト調査は義務化されている調査ではあるものの、調査の内容や調査そのものに対する認知度が未だに低いままです。住宅のリフォーム工事や解体工事を検討している方は、今後アスベスト調査という調査を受ける機会もあるかと思います。そこで今回は、アスベストが及ぼす影響について解説をしながら、アスベスト調査について詳しくお話をしていきます。

今はアスベストという言葉を聞く機会も減ってきました。そのため、アスベストと言われても、「なんのことか分からない」と疑問を持たれる方も増えています。アスベスト調査が実施されている理由を知るためには、まずはアスベストについて知っておく必要があります。ここでは、アスベストについて詳しく解説をしていきます。

参考:厚生労働省「アスベスト(石綿)に関するQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/sekimen/topics/tp050729-1.html

アスベストの正体は、繊維状けい酸塩鉱物と呼ばれる物質です。天然に存在する繊維状の鉱物の総称で、非常に細い繊維が束になった構造をしています。目に見えないほどの細さの繊維は、髪の毛の約5,000分の1程度の太さとも言われています。「アスベスト」と呼ばれることの多い繊維状けい酸塩鉱物ですが、石綿と書いて「いしわた」「せきめん」と呼ばれたり表記されることも多いです。呼び方や表記に違いがあることもありますが、アスベストや石綿は同じ物質です。

実はアスベストは現在使用禁止となっておりますが、禁止される昭和50年以前は保温断熱の目的として、建物に対して吹き付けて施工されていました。一般住宅には保温断熱が主な目的で使用されていましたが、スレート材や防音材として使われることもありました。昭和50年以降の住宅であれば基本的にはアスベストの心配は必要ありませんが、世代交代で住宅をそのまま引き継いでいる方や、引き継いだ住宅をリフォーム工事する方はアスベストが含まれた住宅の可能性が極めて高いため注意が必要となります。

ここまでで、アスベストがどんな物質なのか知っていただくことができたかと思います。昭和50年から禁止されたアスベストですが、これは単純に人体にとって悪影響があると分かったからです。時代とともに規制が厳しくなっていくアスベストですが、では実際にはどのような悪影響を及ぼすのでしょうか。アスベストが与える影響を知ることで、アスベスト調査がいかに重要かを知ることができますので、ここからは一緒にアスベストが与える人体への影響について見ていきましょう。

アスベストを吸い込んでしまうと、将来的に肺線維症を引き起こすリスクが高まります。肺線維症は、肺の線維化していく病気です。名前からは具体的な症状がイメージしにくいですが、アスベストの繊維が肺に蓄積して線維化を起こすことで、肺組織が硬くなります。灰が硬くなると呼吸が上手く行うことができなくなり、やがて呼吸困難を引き起こす疾患です。命にかかわることもあります。アスベストを吸い込んでからすぐに発症するのではなく、15年~20年という潜伏期間を経て発症するため、気付くのが遅れてしまう方も多いです。

アスベストと肺がんの関係はまだ解明されていない部分も多いですが、長期的なアスベストの吸い込みにより、アスベストの繊維が肺を物理的に刺激をして肺がんを引き起こす可能性が懸念されています。アスベストの吸い込みで肺がんが発症する時期としては、15年~40年とされており、こちらも肺繊維症と同様にすぐに発症するわけではありません。万が一アスベストの吸い込みがあった場合は、定期的に検診を受けて、医療的なフォローをしてもらう必要があります。

悪性中皮腫とは、悪性腫瘍のひとつです。悪性中皮腫は、肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜などに発症すると言われている病気です。万が一発症してしまった場合は、抗がん剤治療や放射線治療を行わなければいけません。特に若い年齢でアスベストの吸い込みがあった人のほうが、悪性中皮腫になりやすいとされています。

良性胸水(良性石綿胸水)は、アスベスト繊維が体内に取り込まれ、胸膜に炎症を引き起こすことによって発生します。胸膜は肺を覆う膜で、この膜に水分がたまる状態を胸水と呼びます。アスベストに曝露された場合、胸膜に水がたまりやすくなることがあります。良性胸水は名前に「良性」とついているものの、症状が無いわけではありません。胸水がたまると、呼吸がしにくくなり、胸部に圧迫感を感じることが増えます。特に、胸水が増加すると息切れや咳が現れ、日常生活に支障をきたすことがあります。場合によっては、胸水を抜くための穿刺や胸腔ドレナージが行われることもありますが、再発することがあるため、アスベスト曝露後は定期的な診察を受けることが重要です。また、良性胸水が長期間放置されると、その後の呼吸機能にも影響を及ぼすことがあります。

胸膜プラークは、胸膜に硬い線維性の斑点が形成される病状です。アスベストの繊維が胸膜に取り込まれることで、細胞が変化し、その部分が線維化してプラークを形成します。このプラークは無症状のことが多いですが、大きくなると肺の膨張を制限し、呼吸がしにくくなることがあります。また、胸膜プラークは進行すると呼吸困難を引き起こし、肺の機能を低下させる原因となります。プラーク自体は悪性ではありませんが、アスベスト曝露があったことを示すものであり、将来的に中皮腫や肺がんのリスクを高めることが知られています。積極的な治療が必要なケースは少ないですが、定期的な医師の観察が必要になります。

慢性気管支炎や肺気腫は、アスベストの影響で引き起こされる呼吸器疾患です。気道が炎症を起こす慢性気管支炎では、咳や痰、息切れが現れ、進行すると呼吸困難が増します。肺気腫は肺胞が破壊されて肺の膨張が制限される病気で、進行すると酸素交換が難しくなり、日常生活に支障をきたすことがあります。これらの疾患は喫煙者やアスベスト曝露者に特に多く見られ、早期の診断と適切な治療が求められます。

アスベストが与える人体への影響は、とても大きいことが分かりましたね。アスベストは特に解体する際に飛散しやすく、吸い込みやすいため、リフォーム工事や解体工事ではアスベスト調査が必要な理由も納得していただけるかと思います。では、実際にアスベスト調査の対象となった住宅は、どのようにして調査を行い、また工事までの流れはどうなるのでしょうか。不安に感じている方もいらっしゃるかと思いますので、ここではアスベスト調査について詳しく解説をしていきます。

参考:環境省「大気環境中へのアスベスト飛散防止対策について」
https://www.env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/

アスベストの調査は義務化されているだけではなく、調査に関わる作業員が有資格者であることも必須条件です。アスベストの調査に必要となる主な資格は3つあり、「石綿作業主任者」「石綿取扱作業従事者」「石綿含有建材調査者」が必要になります。石綿作業主任者はアスベストを取り扱う際の計画立案、指揮監督ができる資格です。アスベストを取り扱う工事が発生する際は、事業者は必ず石綿作業主任者を1人以上選任する必要があるため、石綿作業主任者がいないと工事を進めることができません。続いて石綿取扱作業従事者ですが、労働安全衛生法に基づき、アスベストを取り扱う工事を行う際に資格の取得が義務づけられており、この資格も工事には欠かせません。最後に石綿含有建材調査者ですが、建築物の解体・改修工事を行う前に行う事前調査で、作業員が保有している必要がある資格です。実際にアスベスト調査を行う際は、石綿含有建材調査者が調査を実施します。

解体工事を行う場合で、一定規模以上の建物の場合は、事前調査結果の報告を行う必要があります。報告は業者が行うことが義務付けられており、報告先としては、該当地域の地方自治体となります。

アスベスト調査においてアスベストが含まれていることが判明した場合は、決められている石綿飛散防止対策に則りながら工事を進めていくことになります。石綿飛散防止対策は作業別に対策方法が異なるため、作業に応じた対策を業者が行うことが必要です。周囲への環境配慮も必要であるため、作業内容に関する掲示も行うことが義務付けられています。解体工事やリフォーム工事では、プラスチックシートによる作業場の隔離・養生、HEPAフィルタを付けた集じん・排気装置による作業場及び前室内の負圧化、薬液等による湿潤化などのアスベスト対策を行うことが求められます。

自宅の解体や近隣のアスベストを含む建物の解体作業が始まると、私たち近隣住民としてはその影響を避けるために十分な注意を払う必要があります。アスベストはその微細な繊維が空気中に舞い、吸い込むことで健康被害を引き起こす危険があるため、解体作業が行われる前後には周囲の環境に対して特に注意が必要です。基本的には熟練した業者がしっかりと対処するアスベスト解体作業ですが、やはり近隣住人としては気になってしまうのは当然のことですよね。そこでここでは、近隣でアスベスト解体作業が行われる場合の近隣住人としての立場から、気をつけたい注意点についても解説していきます。

まず、解体作業が行われる予定がある場合、私たち住民はその事前情報をしっかりと把握しておくことが重要です。解体する建物にアスベストが含まれている場合、その取り扱いには特別な注意が必要です。解体業者や建物所有者はアスベストを適切に処理する義務があり、事前にその内容を周知しなければなりません。近隣住民として、解体前には必ず通知を受け取ることが求められます。通知には作業の日程や、アスベストを取り扱う際の安全対策について記載されているはずです。このような情報を確認し、万が一アスベストが含まれている場合には、どのような措置が取られるのかについても明確にしておくことが大切です。また、作業が始まる前に不明点があれば、解体業者がどのような方法でアスベストを取り扱うのかを尋ねてみてもいいかもしれません。これにより、解体作業の影響を事前に予測し、準備することができます。

解体作業が始まると、アスベスト繊維が空気中に舞うリスクが高まります。特に、風が強い日や解体作業が進んでいる時間帯には、近隣の住宅にアスベストが飛散する可能性があるため、近隣住民は一層注意を払う必要があります。そのため、作業が行われる時間帯には、窓をしっかり閉め、換気扇やエアコンの使用を控えることが重要です。また、換気をすることで、アスベスト繊維が家の中に入り込んでしまうことがあるため、できるだけ密閉した状態で過ごすことが求められます。もし自宅の近くで解体作業が行われる場合、特に高層の建物や通りに面した場所ではアスベスト繊維が舞いやすいため、必要に応じて外出を避けることを検討したほうが良いでしょう。外出する場合は、特に風の強い日や作業が進んでいる時期を避けるように心掛け、外出する際には防塵マスクの着用を考えるのも一つの予防策です。

解体作業が終了した後、アスベスト繊維が完全に除去されているかどうかの確認が必要です。解体業者は作業後に清掃や検査を実施する義務がありますが、近隣住民としてはその結果をきちんと確認したいと考えるのが自然です。作業終了後にアスベストが完全に処理されていないと、再び繊維が空気中に舞うリスクが残ります。特にアスベスト繊維は非常に微細であり、目に見えない状態でも長期間残留することがあります。そのため、解体作業後に業者が実施した清掃や空気質の検査が適切であったかを確認することが求められます。もし心配な場合は、専門家に依頼して空気中のアスベストレベルを測定してもらうことも可能です。また不安な面があれば、地域の自治体や保健所に相談し、適切な措置を取るよう促してもらうといった方法もあります。解体後に不安が残る場合は、周囲の状況を十分に観察し、気になる点があれば速やかに適切な場所へ相談・報告することが重要です。

アスベストは長期間にわたり、微細な繊維が人体に蓄積されることで健康被害を引き起こす恐れがあります。特に、喘息や呼吸器系の疾患を持つ方、高齢者、子どもなどはアスベストの影響を受けやすいため、作業が進んでいる間は特に注意が必要です。万が一、アスベストが空気中に舞っているのを目にした場合や、呼吸器に不安を感じた場合は、速やかに通報し、解体業者に再確認をお願いすることが求められます。また、解体作業中や作業後に不安を感じる場合は、風向きや時間帯に注意し、外出を避けることも有効です。しっかりとした業者が対応している場合は周囲に悪影響なくアスベスト解体作業が進められているはずですが、どうしても不安な方で外出が必要な場合は、防塵マスクを装着するなどの対処法も取り入れてみましょう。

アスベストを取り扱う可能性のある解体やリフォーム工事は、作業員や住んでいる人に危険が伴うリスクがあるため、作業資格を有した業者に依頼するようにしましょう。なかにはアスベストが含まれている可能性を知りながら、報告が面倒だからという理由でこっそり工事を行うような悪徳な業者もいます。アスベストは危険な物質ですので、しっかりと対策をして工事を行う必要があります。

規定を超えたアスベストが含まれている場合は、アスベストの対策を行いながら工事をしていく必要がありますが、自宅が該当するか分からないという方も多いかと思います。そのため、まずはいつもお願いしている業者がいる場合はその業者に、そうではない場合は屋根や外壁の工事に詳しい業者に相談するのがオススメです。業者によってはアスベストの資格を有している下請け業者に工事を依頼する場合もありますし、業者を紹介してくれることもあります。工事の依頼前には、アスベスト調査を行ってほしいことを伝えると、よりスムーズです。

イーライフでは経験豊富なアドバイザーが、専門的なこともわかりやすくご説明します。パックプランをご用意しているので、追加料金が発生する心配もありません。もし他社の見積もりがあればご持参ください。当社との見積もりの見比べやご相談にも対応可能ですので、是非お気軽にご連絡ください。