屋根や外壁のメンテナンスを考えるとき、多くの人は屋根の瓦や外壁の塗装など、目に見える部分に意識が向きがちです。しかし、実は屋根と外壁が接する小さな部分、いわゆる「取り合い部」は、その名称を知っている方も少なく、雨漏りの盲点になりやすい箇所です。そしてこの取り合い部の劣化や施工不良は、見た目ではほとんどわからず、知らないうちに建物内部に水が侵入してしまうことがあります。そこで今回の記事では、屋根と外壁の境目である取り合い部がなぜ雨漏りしやすいのか、その仕組みや劣化のサイン、点検・メンテナンスの方法まで詳しく解説していきます。普段は意識しにくい箇所だからこそ、正しい知識を持つことが建物を長持ちさせるポイントです。
そもそも屋根や外壁の「取り合い部」ってなに?

屋根と外壁は建物を守る2つの大切な部分ですが、その「境目」である取り合い部(とりあいぶ)を意識している人は少ないかもしれません。取り合い部という名称を初めて聞いたという方も多いかと思います。この取り合い部とは、屋根と外壁が交わる場所に設けられた構造部分で、雨水の侵入を防ぐ重要な役割を担っています。普段は目立たない場所ですが、実は雨漏りが起きやすい要注意ポイントでもあります。まずは、この取り合い部がどんな場所で、どのような働きをしているのかを具体的に見ていきましょう。
取り合い部の構造と役割
取り合い部とは、屋根と外壁が交わる接合部分のことを指します。屋根は雨を流し、外壁は雨をはじくという異なる役割を持つため、屋根と外壁の境目にはどうしても小さな隙間が生まれます。この隙間は構造的にどうしても発生してしまう欠陥ですが、基本的にはこの欠陥は工事の段階で補います。具体的には屋根と外壁の隙間から雨水が入り込まないように、板金と呼ばれる、防水のための樹脂である金属板やシーリング材が使われ、隙間を塞ぐようにしっかり密閉しています。隙間を部材で補ってしっかり防ぐことで、雨が外壁の内側や屋根の下地へ侵入するのを防ぐことができるのです。
取り合い部の種類と設置箇所
取り合い部と一口に言っても、その形や場所は建物によって異なります。代表的なものには、屋根と外壁が垂直に交わる「立ち上がり部」、屋根の端やサッシ周りなどに取りつける「水切り板金」、そして屋根の谷部分に設けられる「谷樋」などがあります。どの取り合い部も、雨水をスムーズに流すことを目的としていますが、構造上どうしても水が溜まりやすく、劣化の影響を受けやすい箇所です。特に強風や台風のあと、板金の浮きやシーリングの割れが起こりやすいため、そこから雨漏りに発展することも珍しくはありません。
取り合い部が雨漏りの盲点になる理由
取り合い部は、屋根の下や外壁の上端など、普段の生活では見えにくい場所にあります。そのため、たとえ劣化が進んでいても気づきにくいのが特徴です。特に、シーリングのひび割れや板金のわずかな浮きは、外から見ただけでは分かりません。雨が降るたびに少しずつ水が入り込み、気づいたときには室内にシミができていた、というケースも少なくありません。また、屋根と外壁は異なる素材でできているため、気温差や湿度によって膨張・収縮の度合いが異なります。この動きのズレが取り合い部の防水材に負担をかけ、ひび割れや隙間を生み出すのです。こうした理由から、取り合い部は「見えない雨漏りの発生源」になりやすいのです。
屋根と外壁の取り合い部からの雨漏りにはどんなリスクがある?

屋根と外壁の取り合い部からの雨漏りは、初めのうちは目立たないことが多く、放置してしまう人も少なくありません。しかし、この部分から侵入した雨水は、家の内部にゆっくりと被害を広げていきます。気づかないうちに木材の腐食やカビの発生、さらにはシロアリ被害につながることもあるのです。しかし実際には、取り合い部からの雨漏りで、どのようなリスクがあるかはあまり知られていません。そこでここでは、取り合い部からの雨漏りが引き起こす具体的なリスクについて詳しく見ていきましょう。
構造材の腐食や劣化が進む
取り合い部からの雨漏りで最も多いのが、家の内部にある木材や下地材が腐ってしまうケースです。外から見えない場所に水が染み込むと、住宅内部にある木材が水分を吸ってしまい、本来の強さを失い徐々に強度が落ちていきます。特に屋根の下地や外壁の内側に使われている構造材が傷むと、家全体の耐久性が下がってしまいます。腐食が進むと釘が効かなくなったり、外壁材が浮いたりすることもあり、結果的に雨漏りがさらに悪化します。放置期間が長くなるほど補修範囲が広がり、修理費用も高額になるため、早期発見と対処が非常に重要です。
カビやシロアリ被害の温床になる
雨漏りによって湿気がこもる環境は、カビやシロアリにとって理想的な繁殖場所になります。特に外壁の裏側や屋根裏などは通気が悪く、湿った状態が長く続くため、どうしても黒カビが発生しやすいのです。カビは建材を傷めるだけでなく、室内の空気にも影響を及ぼし、健康被害を引き起こす可能性もあります。カビの胞子は目に見えないため、気付かないまま吸い続けることで、持病が悪化してしまったりアレルギーを発症することがあるため、小さい子どもや高齢者は特に注意が必要です。また、木材が湿って柔らかくなると、シロアリが侵入して柱や梁を食い荒らすリスクが高まります。雨漏りが原因でシロアリが発生した場合、修繕だけでなく駆除費用もかかるため、被害は想像以上に大きくなることがあります。シロアリ被害に気付かないまま生活していることで、住宅の主要な構造が食べられてしまい、住めなくなるほど危険な状態に陥るリスクもあります。
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断熱性能や快適性の低下
雨漏りによる水分の侵入は、家の断熱材にも悪影響を与えます。断熱材が濡れてしまうと、本来の性能を発揮できず、冬は冷えやすく夏は熱がこもりやすい状態になります。また、湿気がこもることで室内のカビ臭や結露も増え、住まいの快適性が大きく損なわれます。さらに、断熱材が乾く過程で変形したりカビが発生したりすると、再利用が難しく、張り替えが必要になるケースもあります。断熱材の張り替えは、壁の内側のクロスや構造部分を取り除きながらの作業となるため、工事期間中は生活の不便さなどの問題も発生します。取り合い部からの雨漏りは「少しの水」でも建物の環境バランスを崩す原因になるため、油断して放置するのは危険です。
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屋根や外壁の取り合い部からの雨漏りを防ぐ方法とは?

屋根と外壁の取り合い部は、雨漏りのリスクが高い場所だからこそ、日頃の点検やメンテナンスが欠かせません。とはいえ、見えにくい場所なので「どこをチェックすればいいの?」「自分でできることはあるの?」と感じる人も多いでしょう。ここでは、屋根や外壁の取り合い部からの雨漏りを未然に防ぐために、意識したい具体的な対策を紹介します。日常的なチェック方法から専門業者による修繕のポイントまでご紹介していきますので、雨漏りを防ぐ知識のひとつとして内容を押さえておきましょう。
定期的な目視チェックと雨後の確認を習慣にする
取り合い部の雨漏りを防ぐ第一歩は、「気づくこと」です。屋根と外壁の境目付近やベランダの立ち上がり部分を、定期的に目視チェックしてみましょう。板金が浮いていたり、シーリング材がひび割れていたりする場合は、すでに劣化が進んでいるサインです。雨が降ったあとに、外壁の上部や軒天にシミがないかを確認するのも効果的です。特に台風や大雨の後は、風によって板金がずれて水が侵入するケースがあるため注意が必要です。このように普段からの目視チェックにより、部材のひび割れやシミなどの小さな異変に早く気づくことで、大がかりな修理を避けられる可能性が高まります。
部材の劣化は早めに対処する
取り合い部を守るうえで重要なのが、シーリング材と板金などの部材を正常な状態を保つことです。例えばシーリング材は、紫外線や温度変化によって徐々に硬化し、ひび割れや剥がれが起きやすくなります。目立つ劣化が見られた場合は、早めに打ち替えを行うことが求められます。また、板金部分が錆びていたり、釘が浮いていたりする場合は、固定し直したり、錆止め塗料を塗るなどの部分的な補修も有効です。このように、異変を目視でチェックするだけではなく、しっかりと部材の劣化に対処していくことが大切なのです。ただし部分的な作業と言っても、高所作業を伴い専門知識も必要となるため、DIYで対処するのは難しい部分もあります。そのため、異変に気付いたらすぐに専門業者に相談するのが一番安全で安心です。
外壁塗装や屋根工事の際に取り合い部も点検してもらう
屋根や外壁のメンテナンスを行うときは、取り合い部の点検も同時に依頼するのがおすすめです。塗装工事や屋根の葺き替え時には足場を組むため、普段見えにくい部分の状態をしっかり確認するチャンスです。取り合い部については知識がない方も多く、あえて業者も「取り合い部をチェックします」と伝えてこないこともあります。基本的には屋根や外壁を点検する際に、同時に見ていることが多いです。しかし確実に取り合い部の点検までしてもらうためには、業者に「屋根と外壁の取り合い部もチェックしてください」と一言添えておきましょう。一言伝えておくだけでも、業者のチェック漏れを防ぐことにも役立ちます。
まとめ
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