
屋根の形をイメージする時に、ほとんどの方が三角屋根もしくは平らな屋根など、シンプルな形状を思い浮かべることが多いと思います。これは普段私たちが屋根を見ている場所が屋根よりも低く、屋根の全体の形を認識する機会が少ないためこういったイメージを持つことが多くなります。しかし屋根には数多くの形状が存在しており、中にはとても複雑な構造のものも含まれます。こうした違いから地面から見た時同じように見える屋根でも、構造上の理由で雨漏りがしやすいなどのデメリットがある場合もあります。今回はそんな屋根についてよく使われている形状と特徴について解説していきます。
なぜ屋根の形で雨漏りのリスクが変化するの?
屋根からの雨漏りは、経年劣化や部材の破損などにより屋根部分から室内へ浸水してしまうことにより発生します。ただしこのような雨漏りのほとんどは、屋根と屋根のつなぎ目から発生します。屋根と屋根のつなぎ目は屋根の形が複雑なほど多くなり、その分雨漏りを起こしやすくなります。屋根から建物内部に浸水することで、室内への雨漏りやカビの発生などを引き起こし、更に重大な場合建物の躯体に影響を及ぼす可能性もあります。また一度浸水を許してしまうと、屋根の補修や修理を行わない限り被害はどんどん拡大していってしまうため、雨漏りに気付いたらすぐに対応しなければなりません。ここで「それなら雨漏りをしないようなシンプルな屋根にすればいいのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、斜線制限など土地特有の制限などが厳しい場所では部屋の広さを優先することがほとんどのため、その規制に合わせた屋根形状にする必要があります。こういったケースは住宅が密集している都心部の狭小地などでよく見かけます。普段見えない屋根より住みやすさや広さを優先するのが一般的で、結果的に屋根が複雑な形状になってしまうのです。住宅を建てる際は様々な規制のある建築基準法を守らなければならず、何でも好きなように建てることができません。
※斜線制限:通風や最高の確保をするために、建物の各高さを制限するもの。
※建築基準法:日本国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定めた法律。
屋根の形状別メリット・デメリット
屋根の形によって雨漏りのリスクが高まることを知っていただけたかと思いますが、ここではどんな形の屋根があるのか、またその特徴について解説をしていきます。ご自宅の屋根はどんな屋根なのか、また万が一の際にデメリットなどマイナスな部分を知っておくことでトラブルを予測し備えることもできます。屋根の種類や形は10種類以上ありますが、中には現在では使われていないようなものも含まれています。ここでは日本の住宅でよく使われている屋根形状5種類に絞って解説していきます。
①切妻屋根(きりづまやね)
屋根の形としては最も一般的なのがこの切妻屋根と呼ばれるものです。ほぼ同じ大きさの長方形2面により構成され、それぞれの一辺が中央部分でくっついた形状をしています。上から見ると開いた本のようにも見え、下から見上げると三角形の屋根に見えます。そのため普段私たちがイメージする屋根に一番近い形とも言えます。世界的によく使われている屋根形状であり、日本の住宅でも多くの住宅で採用されている屋根形状です。
メリット
・空気の流れが滞りにくく内部結露がしにくい。
・屋根のつなぎ目が少なく雨漏りしにくい。
・建築コストやメンテナンス費用が安く済む。
デメリット
・つなぎ目部分が雨風の影響を受けやすく、外壁が劣化しやすい。
・見た目の特徴がない。
②片流れ屋根(かたながれやね)
文字の通りひとつの方向に向かって角度をつけた屋根の形です。建物に一枚の板を斜めに置いたような見た目をしており、切妻屋根よりも更にシンプルな構造になっています。見た目のシンプルさからどのようなデザインでも相性もよく、近年ではモダンテイストな住宅に多く使われている傾向があります。また比較的広範囲に傾斜がついた屋根形状であることから高さのメリハリがでやすく、室内側に圧迫感を与えないゆとりのある空間をもたせることができます。
メリット
・屋根のつなぎ目が少なく雨漏りしにくい。
・建築コストやメンテナンス費用が安く済む。
・太陽光発電の導入がしやすい。
デメリット
・屋根のない面が多いため雨風の影響を受けやすく、外壁が劣化しやすい。
・一部分の排水量の負担がかかりやすく、雨樋などのメンテナンスが多くなりやすい。
③寄棟屋根(よせむねやね)
日本の住宅によく見られる寄棟屋根は、四方向に勾配があり上から見ると長方形の形になっています。四方向に屋根があるため住宅に合わせてバランスよく屋根が配置されており、落ち着いた雰囲気や重厚感が出る屋根の形状です。昔から使われている屋根形状ですが、和風テイストでも洋風テイストでも合う使いやすいデザインであるため、日本では切妻屋根の次くらいに多く使われている形の屋根です。
メリット
・四方向に勾配があるため雨風に強く、外壁の劣化を防げる。
・屋根の高さを抑えることができるため斜線制限が厳しい地域などに適している。
・全体的な耐久性が高い。
デメリット
・浸水を受けやすい棟部分が長いため、雨漏りを起こしやすい。
・形状によっては通気が悪くなりやすく、内部結露を発生しやすい。
④陸屋根(ろくやね)
陸屋根とは屋根の傾斜がほとんどないフラットな形の屋根のことです。傾斜がほとんどないと言っても、雨水を樋に流すための傾斜はついていますが外観から見てその傾きはほとんど分かりません。鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの構造を利用した住宅に多く見られ、水平に近い見た目のフラットさから近年ではスタイリッシュさを求めた外観の住宅に使われる傾向があります。
メリット
・屋根上スペースを利用できる。
・足場が不要のためメンテナンスがしやすい。
デメリット
・勾配が非常におだやかなため積雪や雨水の排出能力が低いため、雨漏りを起こしやすい。
・他の屋根形状よりメンテナンス回数が多くなりやすい。
⑤差しかけ屋根(さしかけやね)
差しかけ屋根とは切妻屋根を段違いにしたもので、階数に段差のある住宅に使われる屋根のことです。屋根のイメージも前面に出やすく、スタイリッシュな雰囲気になります。近年の住宅に多く用いられており、街中で見る機会が増えた屋根です。
メリット
・屋根が分散されていることにより耐風性があり、突風などにも強い。
・屋根の段違い部分に通風や彩光を確保しやすい。
・建築コストやメンテナンス費用が安く済む。
デメリット
・接合部や下側の屋根の負担が大きく雨漏りを起こしやすい。
形状に関係なく定期的なメンテナンスは必要!

屋根には様々な形があり、またそれぞれのメリット・デメリットが存在することをお分かりいただけたかと思います。普段屋根を意識しながら生活することはありませんが、この機会に自宅の屋根は何屋根なのかを確認しておくのもいいですね。雨漏りがしやすいなどデメリット部分がはっきりしている屋根形状の場合は、梅雨の時期の前に点検を行うなど予測し予め備えることで万が一被害が発生しても拡大を防ぐことができます。しかしどの屋根形状でも雨風の影響を受け劣化は進んでいくものです。台風や突風などで突然屋根が破損してしまうこともあります。そのため「この屋根形状なら雨漏りもしないし絶対大丈夫」というものは存在しません。突然の天災などを防ぐのは難しいものですが、定期点検によって事前に防ぐことは可能です。屋根の定期点検はどんな形状でも10年に1度と推奨されています。お住いの地域が雨が多い、台風が多い、積雪量が多い、海辺の近くなど天候や地形の影響を受けやすい場所だと10年よりももっと早い段階で点検が必要になる場合もあります。その他に使われている屋根材などによっても多少違いがあるため、どのくらいのタイミングでメンテナンスが必要かを施工会社に聞いておくようにしましょう。
まとめ
今回は屋根の形状別のメリット・デメリットや、雨漏りのリスクなどについて解説してきました。いかがだったでしょうか。イーライフでは経験豊富なアドバイザーが、専門的なこともわかりやすくご説明します。パックプランをご用意しているので、追加料金が発生する心配もありません。もし他社の見積もりがあればご持参ください。当社との見積もりの見比べやご相談にも対応可能ですので、是非お気軽にご連絡ください。